646億円の複合施設、80年か300年か ── 推進してきた立場から問う
- •音楽ホールと震災メモリアルの複合化を早くから訴えてきた一人として、膨らむ事業費に市民が納得できる説明を求めました。「何年もたせるのか」への答えは「80年」でした。
竹中の質問
国際センター駅北地区複合施設整備について伺います。先日、全事業費が約646億円にも上るとの見通しが示されました。発表のたびに膨れ上がる数字に、市民からは「高過ぎる」「本当に必要なのか」という不安の声が噴出しております。議会内外からも反対や懸念の声が強まっているのはご承知のとおりです。私はこれまで、音楽ホールと中心部震災メモリアル施設の複合化を訴え、この事業を推進してきた一人であります。だからこそ、この重大局面において、市民が抱く疑念を払拭し、納得して応援できるだけの明確な説明を引き出す責任があると考えております。
本市は今回、実施設計と施工を並行して進めるECI方式を採用するとのことですが、これによって具体的にどの程度の経費削減あるいは工期短縮を見込んでいるのでしょうか。ECI方式は施工者の技術力を早期に取り入れるメリットがある反面、契約金額の透明性確保が課題となります。単なる業者の言い値にならないためのチェック体制と削減目標について伺います。
そもそも、今回示された548億円という建設費、関連費を含めた約646億円という数字は、施工予定者が出した精緻な積算ではありません。行政が先に「備品等を含めれば650億円あるいは700億円規模になる」というアドバルーンを上げてしまえば、入札に参加する建設業者は「そこまでは出してもらえるのだ」と、高止まりした金額で入札してくるおそれがあるのではないでしょうか。このような高額な予測が、かえって建設費の高騰を招く呼び水になっていないか、ご所見を伺います。
次に、複合化の利点をコストと価値の両面から伺います。仙台市はもともと、音楽ホールと震災メモリアルという2つの施設を別々に建設しようとしていました。現在の物価高騰を鑑みれば、震災メモリアル施設単体でも相当な金額になるはずです。仮に今、この2つの施設を別々の場所にそれぞれ単体で建設したとしたら、建設費・用地取得費・維持管理費はいくらになると試算されるのか、比較対照となる数字を明確にお示しください。
コストの足し算・引き算だけでなく、複合化によって高まる価値についても伺います。建設費の数字ばかりが議論されていますが、私たちは「誰が何をつくるのか」という価値に目を向けるべきです。
設計者の藤本壮介氏は、2025年大阪・関西万博の会場デザインプロデューサーを務め、世界最大級の木造建築である大屋根リングを手がけるなど、今、世界で最も注目される建築家です。昨年、森美術館で開かれた初の大規模個展「藤本壮介の建築:原初・未来・森」には、わずか数か月の会期中に20万人を超える来場者が詰めかけました。ロンドンやサンパウロなどを巡回した個展では、世界で約30万人もの動員を記録しています。建築の模型を見るためだけに、これほど多くの人がお金を払って足を運ぶのです。
特筆すべきは、その個展において、本市の複合施設プロジェクトの巨大模型が万博のリングと並ぶメイン展示として紹介された事実です。東京で、そして世界で、多くの人々が仙台のこのプロジェクトに既に注目し、期待を寄せています。完成すれば、建物そのものが世界中から人を呼べる強力な観光資源になると確信いたします。藤本壮介氏による建築物に対して、本市はどのような価値があると認識しているのか伺います。
続いて、建物の寿命とライフサイクルコストについて伺います。私は過去の議会において、ウィーン楽友協会ホールやミラノのスカラ座を例に挙げ、欧州のホールは数百年使い続けられていると訴えました。建設費が600億円を超えようとする今、従来の公共施設のように60年程度で建て替えるような計画では、市民への説明がつきません。少なくとも200年、300年と使うことのできる、将来世代に借金ではなく資産を残すべきだと考えます。基本計画には長寿命化への配慮とありますが、具体的に構造躯体の耐久性として何年を目指しているのでしょうか。
次に、運営と財源確保、本施設の「稼ぐ力」について伺います。私は令和2年の予算等審査特別委員会において、長崎スタジアムシティを例に挙げ、民間主導による収益性の高い施設づくりの重要性を指摘しました。通常、大規模施設は行政が建設する公設が一般的ですが、長崎市はあえて民設民営を選択しました。その結果、開業からわずか1年で485万人という人口の10倍を超える集客を実現し、単月黒字を達成しています。彼らは試合がない345日をどう稼ぐかを徹底的に突き詰めています。
翻って本市は、この5年間、こうした民間の工夫や黒字化への執念をどれだけ計画に取り込んできたでしょうか。企業版ふるさと納税やネーミングライツといった従来の手法の検討にとどまっていないでしょうか。本市の複合施設は公設民営が予定されていますが、公設という枠組みに縛られるあまり、過度な規制や「最後は税金で補填すればよい」という行政の甘えが残るようでは、民間が持つ本来の稼ぐ力は決して引き出せません。維持管理費を税金で補填するのが当たり前という発想を捨て、この複合施設単体でも黒字化を目指すぐらいの気概を持って、民間活力を最大限に引き出す戦略を構築すべきと考えます。
市長は本施設を「世界に誇れる施設」とおっしゃいました。であるならば中途半端な妥協は許されません。建設費の高騰を理由に縮小均衡に陥るのではなく、知恵を絞り、民間の力を借り、仙台の未来を開く世界一の希望の拠点を完成させるという市長の決意を伺います。
(再質問)藤本壮介氏の建築の価値について、「いいんだろうな」という感じは何となく分かるのですが、市民にとっては実感がしにくいような気がしています。私は本当に数千億円の価値があると思っています。今はポケモンカード1枚が25億円の時代です。この建築的価値はとんでもない価値なのだということを、しっかりと市民に訴えていただきたい。そして、何年もたせるつもりなのか、もっと明確にお答えいただきたいと思います。
市の答弁
郡市長
世界的評価を受けている藤本壮介氏のおよそ30年にわたる建築は、一貫して「異なる個の尊重と、それらが共存しながら時につながる場をつくる」という理念で、多くの人々の関わりと共鳴から新しい価値を生み出す建築物として設計されている。この複合施設は、災害文化と文化芸術という一見異なるものの交わりの中から、一人一人の価値を尊重し、未来に貢献する仙台ならではの文化を創造する拠点であり、藤本氏には建築という形で具現化いただいたと認識している。こうした価値を世界にも広く発信し、市民の皆様にお伝えしていくとともに、運営手法等についても工夫を凝らしながら着実に整備を進めてまいりたい。
(再質問に対して)藤本壮介氏はルーヴル美術館の最終選考メンバーの中に残っている。過日フランスに参りまして旅行会社の方とお話をした際にも藤本氏の話に及び、本市が取り組むこの施設についても高い関心を持っていただけた。森美術館での展示会でも、外国の方々も含め相当多くの皆様が関心を持って集まり、ご覧になっておられた姿を私も見ている。建築物としての価値も相当なものだと思うし、その中でつくられる仙台市ならではの文化芸術も、世界に、未来に貢献できるものと捉えている。
文化観光局長
ECI方式については、他都市の事例では20%程度の工期短縮、6%から12%程度のコスト縮減の提案につながったケースがある。公募型プロポーザルにより技術提案を募り、提案内容が実施設計に適切に反映されるよう本市も主体的に関わる。実施設計の段階でもコンストラクションマネジメントによる第三者視点での確認を行うとともに、実際の工事価格は本市の積算基準に基づき算出する。
複合化による効果については、仮に別々の施設として整備した場合の事業費をお示しすることは難しいが、複合化により建設・管理運営の両面で経費の削減が図られるものと認識している。災害文化と文化芸術の交わりにより新しい価値を生み出し、国内外から多くの人を引きつける施設となることから、複合化の意義・効果は極めて大きいものと考えている。
施設の長寿命化について、ホール機能を有する市有建築物は計画的な予防修繕も行いながら80年継続して使用し、建物の状況等によってはそれ以上の利用も想定している。(再質問に対して)本市の公共施設総合マネジメントプランでは、本庁舎・音楽ホール等の用途の建物は計画保全年数を80年としており、状況によってはそれ以上使うこともあるとして延長を判断することができるとしている。80年は当然、市の方針としてマストであり、さらにそれ以上を目指してしっかりとしたものを造り上げていきたい。
民間活力の活用については、まちににぎわいをもたらすことは本施設の重要な役割の一つであり、年間を通して多くの人が集う施設を目指す。稼働率を高めることによる収入確保に加え、市内での周遊や消費などまち全体への経済効果を最大化する視点が重要と考えている。魅力あるコンテンツづくりや発信をどう行っていくかなど、民間の力を効果的に取り入れる手法について引き続き検討してまいりたい。
この記事は、仙台市議会の議事録をもとに要点をまとめたものです。実際の発言全文は議会ウォッチでご確認ください。
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