何が起きているか
- •岡山市は2026年3月19日に「岡山市カスタマーハラスメント防止条例」を公布し、4月1日に施行した。政令指定都市で初めてのカスハラ防止条例である。今週、制定の経緯を紹介する記事がCIOログに再び上がった(W37・W38か…
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何が起きているか
岡山市は2026年3月19日に「岡山市カスタマーハラスメント防止条例」を公布し、4月1日に施行した。政令指定都市で初めてのカスハラ防止条例である。今週、制定の経緯を紹介する記事がCIOログに再び上がった(W37・W38から3週連続で登場)。
注目すべきは次の2点。
- 議員提案条例であること。 市の逐条解説によると、2026年2月の岡山市議会2月定例会に「乙第1号議案」として議員側から提出され、提案者を代表して議員が提案理由を説明している。パブリックコメントも市議会のページで募集された(2025年11月27日〜12月26日)。
- 国の法改正と連動する設計になっていること。 2025年6月に改正労働施策総合推進法が成立し、2026年10月1日から、労働者を1人でも雇うすべての事業主にカスハラ防止措置が義務化される。岡山市の条例は、この施行日に合わせて「事業者の責務」を努力義務から義務へ自動的に切り替える附則を最初から組み込んでいる。
条例の中身(一次情報の要点)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 定義(第2条) | 顧客等から就業者への言動で、暴行・脅迫などの違法行為、または社会通念上許容される範囲を超えたものにより、就業者の人格・尊厳・就業環境が害されるもの |
| 例示(第2条2項) | 妥当性を欠く要求、業務と無関係な要求、身体的攻撃、SNSでの誹謗中傷・無断撮影、威圧的言動、長時間の拘束、差別的言動、土下座の要求など12類型を列挙 |
| 就業者の範囲 | 従業員だけでなく、フリーランス・ボランティア・実習生、公的機関の職員、議員、町内会・PTA・子ども会・スポーツ少年団の活動に従事する人まで含む(逐条解説) |
| 禁止(第4条) | 「何人も、あらゆる場において、カスタマーハラスメントを行ってはならない」 |
| 配慮規定(第5条) | 障害者への合理的配慮、認知症の人への配慮に留意することを明記 |
| 事業者の責務(第8条) | 相談体制の整備、被害を受けた就業者の安全確保、相談したことを理由とする不利益取扱いの禁止 など |
| 市の施策(第10条) | 情報提供、啓発・教育、相談・助言 |
| 撲滅月間(第13条) | 毎年12月を「カスタマーハラスメント撲滅月間」とする |
| 罰則 | なし。附則で「施行状況や法令整備を見て、必要なら罰則を設けることを検討する」と規定 |
| 法改正との連動(附則3項) | 改正法の施行日に、事業者の措置を「努めなければならない」から「講じなければならない」へ改める |
出典:岡山市カスタマーハラスメント防止条例について(岡山市)/条例本文(PDF)/逐条解説(PDF)/パブリックコメント募集(岡山市議会)
仙台市の現状
仙台市は「仙台市職員カスタマーハラスメント対策基本方針」を策定し、市のサイトで公開している。定義と該当行為の例(長時間の拘束、「税金泥棒」などの侮辱、不当・過剰な要求など)を示し、職員を守る姿勢を明確にしている。
ただしこれは市役所の職員を対象とした方針であり、市内の民間事業者・就業者全体を対象にした条例ではない。市の公式サイトで確認できた範囲では、仙台市・宮城県ともに、民間まで含めたカスハラ防止条例は見当たらなかった(網羅的な確認ではない)。
冷静に見るべき点
- 岡山市の条例は理念条例に近い。罰則はなく、実効性は啓発・相談体制・撲滅月間の運用次第である。施行から半年で、相談件数などの効果を示すデータはまだ公表されていない。
- 一方で、10月1日からは国の法律で事業主の措置が義務になる。条例がなくても事業主の義務は発生するため、自治体独自の条例に何を上乗せするかが問われる。岡山市の上乗せ部分は「フリーランス・ボランティア・町内会活動まで守る範囲の広さ」「市の相談・啓発の責務」「撲滅月間」と整理できる。
- 「顧客等の権利を不当に侵害しない」「障害者・認知症の人への配慮」を条文に書き込んでいる点は、正当な苦情や市民相談まで萎縮させないための工夫として参考になる。市民相談を受ける議員の立場からも重要な論点である。
仙台市への示唆・議会質問の方向性
- 10月1日の法施行に向けた、市内中小企業への支援策はあるか。 労働者1人の事業主も対象で、経過措置はない。相談窓口・ひな形(対応マニュアル・掲示物)の提供・セミナーなど、本市としての支援の有無を確認したい。
- 職員向けの基本方針にとどまらず、市民・事業者全体を対象とした条例を検討する考えはあるか。 岡山市のように、町内会・PTA・ボランティアなど地域活動の担い手まで守る範囲の設定は、担い手不足に悩む町内会の現場にも関わる。
- カスハラ対策と、正当な市民の声を萎縮させないことの両立をどう図るか。 本市の基本方針は「意見や要望は誠実に受け止める」と明記しているが、窓口での運用にあたって、障害のある方や認知症の方への合理的配慮をどう組み込んでいるかを確認したい。