年金が5万円増えたら、介護の負担が46万円増えた ── 「非課税から課税へ」で支援が消える負の連鎖
- •物価高騰対策で年金や賃金がわずかに増えたことで住民税非課税から課税に変わり、かえって介護・子育ての支援を失う世帯があります。竹中議員の質問に対し、仙台市は年金収入が5万円以下の増加で課税の所得段階に変わった高齢者が1,600人余、所得超過で児童扶養手当が支給停止となった方が約140人いることを明らかにしました。
竹中の質問
物価高騰対策の中で、国も賃上げ政策に全力を挙げ、年金も僅かながら増額されています。しかし、収入の僅かな増加のせいで、様々な支援が打ち切られる問題が起こっていると指摘しました。令和4年度決算等審査特別委員会では、あるシングルマザーが物価高・賃上げ政策により賃金が微増したことで、児童扶養手当・就学援助・母子父子家庭医療費助成が全て解除され、年間4、50万円の負担増となった事例を訴えていました。
今回は、物価高騰による年金の増額で同じ苦しみを感じているとの相談を受けたとして、次の事例を挙げました。義母が要介護4で施設に入所されている世帯で、高齢の義父の年金が僅か5万円増加しただけで、施設利用負担が年間約40万円台から約86万円へと、約46万円激増したという訴えです。年金額や収入が微増し、その増加が住民税非課税世帯から課税世帯になる状況を生み、介護保険料や利用者負担が急激に跳ね上がる。これでは年金のありがたさがたちまち地獄の苦しみへと変わってしまうと述べました。
独り親家庭でも、児童扶養手当の収入基準を僅かに超えただけで、こどもの就学援助や医療助成が一斉に打ち切られ、生活が立ち行かなくなる。こうした支援連鎖の断絶は、制度が救うべき人を反転させて苦しめる構造であり、決して特殊な例ではなく増えつつあるとして、自治体として激変緩和策を確立すべきだと主張しました。その前提として、令和6年度と7年度を比較して、年金や収入の微増による住民税課税世帯への移行と、それに伴う介護・子育て支援の喪失が市内でどの程度発生しているのかを質しました。
国の制度と自治体の制度が連動していることによって支援が連鎖的に喪失する構造を防ぐ必要があるとして、国に対して非課税基準や支援継続の制度見直しを強く働きかけるよう求めました。その上で、就学援助の認定基準額を児童扶養手当の認定基準額より高く設定するなど、市独自の激変緩和策を早急に検討すべきではないかと提案しました。
また、相談者のシングルマザーが「もしこのような数十万円もの支援を失うことになるなら、事前に会社に給与を引き上げないように懇願したかった」と訴えていたことを紹介し、支援の所得限度額が分かりにくく、何の前触れもなく打切り通知が届いてしまう現状を改めるべきだと述べました。支援喪失のリスクを事前に分かりやすく伝え、相談支援を強化する仕組みづくりができないかを質問しました。あわせて、生活保護世帯が就労復帰した際に一定期間状況を見守り即座に保護脱却しない仕組みがあるのと同様に、非課税と課税の境目に置かれた世帯にも見守り・猶予の体制を求めました。
再質問では、独り親で約140人、年金増で課税世帯になった方が1,600人という答弁を受け、物価高騰で苦しい中の僅かな給与アップや年金増を喜んだところに数十万円の負担が課される事態であり、保険料が変わらない緩和策よりも「そのほかの負担が増えるところ」が大きな問題だと指摘。市独自策を考える必要があると思っているのかどうか、二役(市長・副市長)の見解を求めました。
市の答弁
健康福祉局長(郷湖伸也)
把握が可能な第1号被保険者の介護保険料について、令和6年度当初の時点で本人が市町村民税非課税である所得段階区分だった方のうち、5万円以下の年金収入の増加により令和7年度当初に課税である所得段階区分に変わった方は1,600人余であると答えました。
負担上昇の緩和については、介護保険第1号被保険者保険料の所得段階の一部が老齢基礎年金の満額相当額を基に設定されており、今般の年金額の増加に伴って満額受給者の保険料が変わらないよう介護保険法施行令が改正されたと説明。収入の増加に比して著しく負担が増加する方への支援については、国の動向を注視し、必要に応じて意見を申し述べるなど対応していくと述べました。
事前のお知らせについては、介護保険料は毎年6月中旬に決定通知書を送付しているが、算定に必要な市町村民税の情報を税部門から受け取るのが5月下旬であり、決定通知書作成よりも前に別途お知らせすることは難しい状況だと答えました。分かりやすい所得基準表を作成して配布するなど、引き続き丁寧な周知に努めるとしています。
こども若者局長(郷内俊一)
令和6年度の児童扶養手当受給者のうち、令和6年11月の所得の切替え時に新たに所得制限を超過し支給停止となった人数は約140人と答えました。ただし収入が増えた理由は就職・転職・昇給など様々であり、物価高騰に伴う賃金や年金の上昇が直接の支給停止の原因となった件数を把握することは困難だとしています。
一つの制度における所得基準を超過したことで関連する複数の制度の対象から外れてしまうことは、当事者の生計を維持する上で大変影響が大きいと認識しているとして、今後、他都市とも課題を共有しながら、国に対して物価高騰に伴う賃金上昇を考慮した所得制限基準の見直しなど制度改善に向けた要望を行うことについて検討していくと述べました。
相談支援については、支給申請や更新手続などの際に制度の基準等を丁寧に説明することが重要であるとし、独り親サポートブック「うぇるびぃ」を活用するなど分かりやすい説明に努めると答えました。
教育長(天野元)
就学援助は、生活保護の基準を上回る収入があっても生活に困窮していると認められる、いわゆる準要保護の方々に対して学用品費等を援助するものであり、加えて独り親世帯への支援として、就学援助の基準を上回る場合であっても児童扶養手当を受給している方にも対象を広げていると説明。さらに児童扶養手当の基準を上回るような所得基準とすることは、準要保護世帯を支援するという本制度の趣旨とは異なるものと考えており、引き続き適切な制度の運用を行っていくと答えました。
副市長(藤本章)
制度のはざまで大変な思いをされている方への対応について、行政に携わる者としてそうした事例をどう受け止め、どう解消していくかは非常に大きな課題であると述べました。一方で国の制度等の中で財政の負担も考えざるを得ないとして、今回の指摘は指摘として受け止めた上で、今後どういう形が可能なのかを引き続き考えていかなければならないとしました。本市独自の判断だけでは済まないとも思うとし、方策について引き続き検討していく考えを示しました。
この記事は、仙台市議会の議事録をもとに要点をまとめたものです。実際の発言全文は議会ウォッチでご確認ください。
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